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大阪地方裁判所 昭和60年(わ)6124号・昭60年(わ)6237号 判決

右の者らに対する相続税法違反および被告人南野喜昭、同城戸高虎、同宮崎素昭に対する所得税法違反各被告事件につき、当裁判所は検察官長谷川充弘出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人山本裕三を懲役一年六月及び罰金三、〇〇〇万円に

同 城戸高虎を懲役一年六月及び罰金一、五〇〇万円に

同 首藤宰を懲役一〇月及び罰金三〇〇万円に

同 西尾光治郎を懲役一年及び罰金八〇〇万円に

同 南野喜昭を懲役一〇月及び罰金一〇〇〇万円に

同 宮崎素昭を懲役一〇月及び罰金三〇〇万円に

それぞれに処する。

被告人らにおいて右罰金を完納することができないときは、被告人山本裕三につき金五万円を、その余の各被告人につき金二万円をそれぞれ一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。この裁判確定の日から、被告人山本裕三、同首藤宰、同西尾光治郎、同南野喜昭、同宮崎素昭に対し各三年間、それぞれの懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人南野喜昭は、大阪府門真市大字島四九〇番地の二に居住し、実父南野茂造の死亡(昭和五九年四月七日)により同人の財産を共同相続し、他の共同相続人四名との遺産分割の協議によりその遺産の一部を相続したもの、同城戸高虎及び同首藤宰は、「香里住宅」の名称で不動産業を共同で営んでいるもの、同宮崎素昭は、不動産賃貸業を営んでいるものであるが、

一  被告人南野喜昭、同城戸高虎、同首藤宰及び同宮崎素昭は、共謀の上、右南野茂造にかかる架空債務を計上して相続税の課税価格を減少させる方法により、被告人南野喜昭の相続税を免れようと企て、同被告人の正規の相続税の課税価格が九八六二万三六九〇円(別紙(一)修正貸借対照表参照)で、これに対する相続税額が一四三〇万六二〇〇円であるにもかかわらず、右南野茂造には、守信商事に対し一億六五二〇万〇〇〇〇円の債務があり、かつ被告人南野喜昭がそのうち一億五八二九万七七五〇円を負担することとなった旨仮装するなどした上、昭和五九年九月二九日同市殿島町八番一二号所在の所轄門真税務署において、同税務署長に対し、被告人南野喜昭の相続税の課税価格が三七八九万二七二八円で、これに対する相続税額が〇円である旨の内容虚偽の相続税申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告人南野喜昭の相続税一四三〇万六二〇〇円(別紙(二)脱税額計算書参照)を免れ

二  被告人南野喜昭、同城戸高虎及び同宮崎素昭は、共謀の上、同南野喜昭が昭和五九年中にその所有の京都府綴喜郡田辺町大字東小字西神屋一七〇番地の田を売却したことによる譲渡所得にかかる同被告人の同年分の所得税を免れようと企て、その総所得金額が四九四万二〇五六円で、分離課税による実際の長期譲渡所得が七八二八万六三六六円(別紙(三)修正損益計算書参照)で、これらに対する同年分の所得税額が源泉徴収税額を控除して一九三九万〇四〇〇円であったにもかかわらず、同被告人が松岡藤次郎に対し、四四〇〇万〇〇〇〇円の連帯保証債務を有し、その履行のために、右不動産を譲渡し、かつ、その履行に伴う求償権の行使ができなかったかのごとく仮装するなどの方法により、所得の一部を秘匿した上、昭和六〇年三月一一日、前記所轄門真税務署において、同税務署長に対し、被告人南野喜昭の総所得金額が四九四万二〇五六円で、これに対する所得税額が七〇万二七五〇円であり、分離課税による長期譲渡所得金額が七九六万〇〇〇〇円で、これに対する所得税額が一五九万二〇〇〇円となるので、同五九年分の所得税額が源泉徴収税額を控除して一七八万一七〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告人南野喜昭の同五九年分の正規の所得税額一九三九万〇四〇〇円と右申告税額との差額一七六〇万八七〇〇円(別紙(四)脱税額計算書)参照)の所得税を免れ

第二  被告人山本裕三は、大阪府門真市小路町二三番二号に居住し、実父山本久治郎の死亡(昭和五九年四月一三日)により同人の財産を共同相続し、他の共同相続人三名との遺産分割の協議によりその遺産の全部を相続したもの、同城戸高虎及び同首藤宰は前記のとおり、「香里住宅」の名称で不動産業を共同で営んでいるもの、同西尾光治郎は、「西尾経済研究所」の名称で経営コンサルタント業を営んでいたものであるが、被告人山本裕三、同城戸高虎、同首藤宰及び同西尾光治郎は共謀の上、右山本久治郎にかかる架空債務を計上して相続税の課税価格を減少させる方法により、被告人山本裕三の相続税を免れようと企て、同被告人の正規の相続税の課税価格が四億一七一〇万〇三五六円(別紙(五)修正貸借対照表参照)で、これに対する相続税額が一億五八一〇万四一〇〇円であるにもかかわらず、右山本久治郎には、福富商事に対し三億八三〇〇万〇〇〇〇円の債務があり、かつ被告人山本裕三においてこれを負担すべきこととなったかのごとく仮装するなどした上、昭和五九年一〇月一五日同市殿島町八番一二号所在の所轄門真税務署において、同税務署長に対し、被告人山本裕三の相続税の課税価格が三四一〇万〇三五六円で、これに対する相続税額が〇円である旨の内容虚偽の相続税申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告人山本裕三の相続税一億五八一〇万四一〇〇円(別紙(六)脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人城戸高虎、同首藤宰、同西尾光治郎および同宮崎素昭の当公判廷における各供述

一  検察官に対する被告人城戸高虎(昭和六〇年一二月一六日付、同月二六日付(二))、同首藤宰(同月一一日付)、同西尾光治郎(同月一三日付、同月一七日付)及び宮崎素昭(同月一八日付、同月一九日付)の各供述調書

判示第一の一、二の各事業につき

一  被告人南野喜昭の当公判廷における供述

一  検察官に対する被告人南野喜昭(昭和六〇年一二月一三日付)、同宮崎素昭(同月一二日付、同月二四日付)および同首藤宰(同月二五日付)の各供述調書

一  南野喜久子の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の南野喜久子に対する質問てん末書

判示第一の一の事実につき

一  検察官に対する被告人南野喜昭(昭和六〇年一二月一七日付、同月二〇日付、同月二一日付、同月二四日付(一))、同宮崎素昭(同月二一日付)、同城戸高虎(同月二二日付、同月二三日付)および同首藤宰(同月二一日付)ならびに南野繁次の各供述調書

一  収税官吏作成の南野繁次、辻本利枝、山内安枝および巽タキノに対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(昭和六〇年一二月二五日付、同六一年六月一九日付)

一  門真税務署長作成の証明書三通(相続税申告書写および法人税申告書写添付)(検察官請求証拠目録番号一三、九一および九二のもの以下番号一三、九一および九二と略記する)

一  門真市長作成の戸籍謄本(番号一二)

一  収税官吏作成の調査書(昭和六〇年一二月二四日付(一)、(二)、同月二五日付、同月一九日付、同月一八日付、同月六一年七月七日付、同年六月一六日付、同月一八日付)

判示第一の二の事実につき

一  検察官に対する被告人南野喜昭(昭和六〇年一二月二四日付(二)、同月二五日付(一)、(二))、同宮崎素昭(同月二五日付)および同城戸高虎(同月二五日付、同月二六日付(一))の各供述調書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(昭和六〇年一二月二六日付、同六一年六月二五日付)

一  門真税務署長作成の証明書(所得税申告書写添付)(番号二四)

一  収税官吏作成の調査書(昭和六〇年一二月二六日付(一)、(二)、(三)、(四))

判示第二の事実につき

一  被告人山本裕三の当公判廷における供述

一  検察官に対する被告人山本裕三(五通)、同城戸高虎(昭和六〇年一二月九日付、同月一九日付、同月二〇日付、同月二一日付)、同首藤宰(同月一〇日付、同月一九日付、同月二〇日付、同月二三日付)および同西尾光治郎(同月一〇日付、同月一八日付、同月二〇日付、同月二一日付、同月二三日付)ならびに山本春江および山本満枝(二通)の各供述調書

一  収税官吏作成の前田敏江(二通)および平田和美に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(同年一二月二一日付)

一  収税官吏作成の調査書(昭和六〇年一二月一一日付(一)、(二)同月四日付、同月一四日付(一)、(二))

一  門真市長作成の戸籍謄本(番号二)

(法令の適用)

判示第一の一、第二の各所為

相続税法六八条、刑法六〇条(被告人城戸高虎、同首藤宰、同西尾光治郎、同宮崎素昭につきさらに刑法六五条一項)いずれも懲役刑と罰金刑を併科

判示第一の二の各所為

所得税法二三八条、刑法六〇条(被告人城戸高虎、同宮崎素昭につきさらに刑法六五条一項)いずれも懲役刑と罰金刑を併科

併合罪加重

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役刑については被告人城戸高虎につき犯情の最も重い判示第二の罪の刑に、同首藤宰につき犯情の重い判示第二の罪の刑に、同南野喜昭、同宮崎素昭につきいずれも犯情の重い判示第一の二の罪の刑にそれぞれ法定の加重)

労役場留置

刑法一八条

懲役刑の執行猶予

刑法二五条一項

(量刑の理由)

被告人城戸、同首藤、同西尾および同宮崎はいわゆる脱税コンサルタントとして昭和五八年ころから本件と同様な脱税事犯を繰り返していたものであるが、その手口は被告人西尾あるいは同宮崎が、謝礼は少なく済ませた税金の額の半分以下でよいなどと甘言を用いて依頼者を勧誘して被告人城戸に紹介し、同被告人が脱税のための申告手続を請負い、被告人首藤と共に実務的な作業をして、相続税であれば架空の債務を計上し、あるいは、不動産譲渡に関する所得税であれば売上代金を圧縮したり、取得費用を水増しするなどして脱税工作をしたうえ、被告人城戸は自ら地元の部落解放同盟に加入してその影響力を背景にいわゆる同和団体に対する税務当局の弱腰な態度に便乗して、その税務調査を免れ所期の目的を果し、依頼者から報酬を得てこれを仲間と分け合うという私利私欲のために部落解放運動を悪用した卑劣なものであり、租税秩序に対する積極的な妨害工作をしたという点では納税義務者たる脱税犯人と較べてもより一層非難すべく国家の税制を喰い物にして自己らの不正の利得を計った悪質なものである。

本件においても、被告人山本は被告人西尾を通し、また被告人南野は被告人宮崎に勧誘されて、それぞれ脱税工作を被告人城戸らに依頼するようになったものであり、被告人城戸らは本件各犯行の報酬として被告人山本から三九〇〇万円、被告人南野から二九〇〇万円を取得し、このうち部落解放同盟関係者らに流れたもの約一三〇〇万円を除いた残余は被告人城戸、同首藤、同西尾および同宮崎の四人で山分けしているものであるが、とりわけ被告人城戸は自らが本件各脱税工作の中となってこれを主導していることもあってか、そのうちの二分の一近くを取得しているものであり、その犯行態様ともあいまって罪責は重大であり、同被告人が取得した前記報酬をそれぞれ返還し、公判廷犯においても反省の態度を表していることなど斟酌すべき事情を考慮しても、なお同被告人に対してその刑の執行を猶予すべきものとは言えないものである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 七澤章)

別紙(一)

修正貸借対照表

南野喜昭

昭和59年4月7日相続

<省略>

別紙(二) 脱税額計算書

<省略>

南野喜昭の相続税額

<ニ>から100円未満を切捨て-14,306,200

別紙(三)

修正損益計算書

南野喜昭

自 昭和59年1月1日

至 昭和59年12月31日

<省略>

別紙(四) 脱税額計算書

<省略>

別紙(五)

修正貸借対照表

山本裕三

昭和59年4月13日相続

<省略>

別紙(六) 脱税額計算書

<省略>

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